交通事故鑑定・解析・調査

鑑定内容

 

車水没 女性死亡


出動せず 消防長『遺憾』

 

栃木県鹿沼市の市道で十六日に豪雨のため軽乗用車が水没し、派遣社員高橋博子さん(45)が死亡した事故で、同市消防本部が一一九番通報を複数回受けながら現場に出動していなかった。岩出勝美消防長は二十三日「出動させることができず、非常に遺憾。今後は万全の態勢を期したい。遺族への謝罪については市長と協議して決めたい」と述べた。
同本部は「豪雨被害で一一九番が殺到し冷静な判断ができなかった」と釈明している。
 同本部によると、高橋さんの母親からの「娘の車が川に流された」との一一九番通報を受け、現場とは別の川に救助工作車を向かわせた。その後、目撃者二人からも現場の水没車両についての通報があった。
 しかし、同じ現場で、別の水没した車から女性が脱出したとの通報を受けていたため混同。救急出動命令を出さなかったという。高橋さんの乗った車は、通報から約一時間後に鹿沼署員が発見した。

【2008年8月24日東京新聞】

 

【ほんとは怖いアンダーパス】

 

アンダーパスとは、道路及び鉄道橋が立体交差する場合、

鉄道橋の下をくぐる道路の事です。

 

通常の立体交差とは少し異なり、半地下の構造が多いのが特徴です。

 

アタリマエの事ですが、水は高いところから低いところへと流れます。

 

低い位置にあるアンダーパスには、当然雨水が集中することとなり、

激しい集中豪雨の場合は浸水してしまうことが希にあります。

 

よく車両がこの浸水したアンダーパスに突入してしまう事故が多発しています。

 

この種の事故が起きるのは大抵夜間です。

そもそも、ヘッドライトはロービームの状態で、40m先までしか見えません。

 

ちなみに、50km/hの速度で進行した場合、

雨天の湿潤路面では、停止するまでに必要な距離は

危険認知 → 制動決断 → ブレーキを踏み込み → 制動 → 停止

空走距離を含めて、約33.6m要します。

 

先のヘッドライトの照射範囲が40mですから、

そこに危険があるか否かを判断するのに

必要な距離は50km/hの場合、6.4mしかないのです。

 

この距離を速度で割れば、僅か0.5秒未満の時間で危険かそうでないかを

判断しなければならない事となります。

 

雨の日には!?

ワイパーを最大にしても尚、視界が取りにくい状況を

浸水するかしないかの一つのフラグと考えてください。

 

また、側溝や雨水桝から水があふれ出ているのを見かけたりすると、これも浸水のフラグです。

 

速度を出さない前に50km/hの速度で試算しましたが、これら60km/hであれば、

停止までに要する距離は45mです。

 

ヘッドライトの照射先が40mですから、

この速度で走っている時点で既にブレーキを踏んだとしても間に合わないのです。

 

ちなみに40km/hの速度であれば、停止まで23.7の距離ですから、

ヘッドライトで危険を認知してから充分止まれます。

・・・・もし、水に浸かったら・・・・

慌てない!

車は空洞が多く、体積あたりの比重は水よりも軽いのです。

 

ですから、沈むまでには少し時間があります。

この時間を有効に使えば充分助かります。

・・・・窓を割る!・・・・

車のフロントガラスは少々の力では割れても変形するだけですが、

側面のドアガラスは存外、簡単に割れます。

もちろん、手で叩いたくらいでは割れませんが、

鍵などを用いて、一点に力を集中させれば、粉々になり、そこから脱出が可能です。

(非力な女性でも、意外と簡単に割れます)

(脱出用ハンマーも販売されています。)

 

・・・・窓が割れない場合!・・・・

(浸水が進み窓を割ることが危険な場合や、割ることができない場合)

 

  ① ドアのロックを解除する
  ・電気式のものでも各ドアにある手動のレバーやノブで解除できます。
  ② 胸から首のあたりまで浸水するのを「冷静に」待つ
  ③ 大きく息を吸い込みドアを開け脱出する
  ・水の抵抗でドアは重くなっているので、足などで力を込めて開けます。

 

最近では、突発的なゲリラ豪雨が多発しています。

降雨時は事故の危険性が飛躍的に高くなりますので、

出来るだけ、安全な速度で運行してください。

2008/08/26 法工学研究員 石橋