【ニュースコラム】
福岡3児死亡事故 ガードレールの強度、車衝突には不足
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福岡市東区奈多の「海の中道大橋」で25日夜、追突されたRV車が海に落ち、幼児3人が死亡した事故で、車が転落した際に突き破ったガードレールは歩行者や自転車用で、車の衝突を受け止めるのに必要な強度が足りなかったことが分かった。
道路を管理する市港湾局は「車道と歩道との間にある段差の高さ、歩道の幅から国の基準に適合する歩行者、自転車用にした。想定外の事故だった」と話している。
県警によると、追突されたRV車は車道と歩道を隔てる約20センチの段差を乗り上げ、幅約4メートルの歩道を横切り、高さ約1メートルの金属製のガードレールを突き破って海に落ちた。
市によると、ガードレールは国土交通省の「防護柵(さく)の設置基準」で「橋梁(きょうりょう)区間は、通常歩道がある場合、車両の転落を考慮する必要はない」とされており、歩行者、自転車用にしたという。
強度は、幅1メートルに対して体重60キロの大人4人が寄りかかっても壊れない程度という。
反対側の南側には歩道がなく、車両用のガードレールが設置されている。
事故が起きた北側とは形状が異なり、総重量25トンの車両が衝突した場合を想定している。
道路と平行に渡された金属棒の数は北側は6本で、南側は3本。
いずれも一番上の1本は直径11.4センチの円柱形だが、事故が起きた北側の残り5本は厚さ6ミリの板状で、残り2本が直径7.6センチの南側と比べ、はるかに弱い作りだ。
市は「段差と歩道を越え、車が衝突する事態は想定しなかった。
全国一律の基準で作っており、予想以上の荷重がかかり、事故を防げなかった」と話している。
海の中道大橋は長さ約750メートル。市が97年6月に着工し、02年10月に供用開始。ガードレールは01年度に建設された。
今回の事故は25日午後10時50分ごろ起きた。
追突された車に乗っていた同市博多区千代1丁目、会社員大上哲央(あきお)さん(33)の長男紘彬(ひろあき)ちゃん(4)、次男倫彬(ともあき)ちゃん(3)、長女紗彬(さあや)ちゃん(1)が水死した。
運転していた大上さんと妻かおりさん(29)は軽いけが。
県警は業務上過失致死傷と道交法違反(ひき逃げ)容疑で東区奈多、同市職員今林大(ふとし)容疑者(22)を緊急逮捕した。
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【朝日新聞 2006年8月27日 10時53分】

今回の事故車両の写真を観察しますと、
被害車両の右後端部に、加害車両の左前部が衝突しています。
車両は走行中、左右何れかの後端部に力すなわち外力が加わりますと、
いとも簡単にバランスを崩し運転者には制御不能の状態となってしまいます。
アメリカの警察ではこの物理現象を利用して
高速走行する車両を強制的に停車させる事も行っています。
参考動画では運転者の技量で車体を立て直していますが、
一般の運転者にはほぼ不可能です。
本件では被害車両は制御不能の状況で欄干を突き破ったものと認められます。
今回のケースは、予測が困難な事象が、
飲酒・スピード超過・違法な追い越し・これら犯罪によって誘発されました。
事件報道を見ておりますと、
ガードレールの強度が不足していた事が、
子供達の命を奪ったかのような論調が目立ちました。
もし、衝突した欄干が、車両の転落を考慮されたものであったのなら・・・・
制御を失った被害者車両は狭い橋梁上で他車両を巻き込んで子供達の命だけでは飽きたらず、
更に多くの人命を奪っていたかも知れません。
皮肉な事ですが、結果として、
この欄干は加害者車両搭乗者の命のみは守った・・と・・言えます。
(2006/08/30石橋)