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トヨタ 「プリウス」改修を開始 全国5000店で一斉に

トヨタ自動車は10日、ブレーキが一時的に利きにくい不具合でリコールを届け出たハイブリッド車(HV)新型「プリウス」について、トヨペットなど全国の系列販売店約5000店で一斉に改修を始めた。
 改修の対象は、昨年4月20日から今年1月27日までに製造された約20万台に上る。改修は、不具合の原因となったABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の動作を制御するプログラムを書き換える。プリウス以外のセダンタイプのHV「SAI」や高級ブランド「レクサスHS250h」の改修は3月ごろから始める。
 東京トヨペット芝浦店(東京都港区)では午前10時の開店と同時に、ユーザーが訪れ、改修作業が始まった。エンジニア2人がプログラムを書き換え、点検を含めて作業は約40分で終了した。
 改修を受けた東京都港区の会社役員、野口真紀子さん(61)は「昨日、販売店から連絡を受け、これまで不具合を感じたことはなかったが、早速、朝一番に来た」と語った。この店の対象車数は46台で、10日は改修の予約が9台入っており、担当者は「一日も早く改修を終えたい」と述べた。

【宮崎泰宏】毎日新聞 2月10日11時34分配信

【トヨタ「プリウス」リコール問題】

 

トヨタ車のリコールが連日マスコミを賑わしています。
 
今回、プリウスの不具合とされた部位がなぜ話題になったのか? 
 
いくつかの条件を揃えれば
比較的簡単に事象が再現できるからに他なりません
 
交通事故や火災を分析していきますと
製品不具合が疑われる事件はというものは存外多発しています。
 
ここで、疑われる・・・と表現したのは、不具合の再現が困難だからです。
 
 例えば、体重70kgの人間が2人乗車した状態で、R70m 5%下り勾配
横断勾配9% の道路を80km/hで走行した場合生じる不具合
なんてものは、理論上再現可能であってもの、実際には再現できません。
 
再現実験をしようにも、制限速度を超過して走ることが出来ません。
 
では、同じ条件の制限速度規制のない道路で再現すれば・・
・・などの意見が出ると思いますが、
類似した条件はあっても同じ道路は二つとしてありません。
 
第一、道路は公共物ですので、事実解明のためとはいえ、
お上は、おいそれて速度規制を解除などしてくれないのです。
 
例え不具合が生じたと強く推認されて、いくら声を大にして訴えても、
その不具合を再現できなければ証明したことにはならないのです。
 
一方、メーカーでは
ちゃっかりその不具合部分は点検などと称して、
コッソリ改善していたりします。
(特に外国メーカなどはその傾向が強いです)
 
開発の現場では、様々な状況を想定して設計しますが、全てではありません。
 
そもそも自動車は、2万点からの部品を組み合わせて作られています。
 
部品間の相性も関係します、
あらゆる環境下・状況下で不具合を精査するなんて事は不可能です。
 
これは、自動車に限らず全ての工業製品に言えます。
特にコンピュータ制御の製品なら尚更です。
(・・PCの不具合や修正プログラムなんて日常茶飯事ですから・・)
 
つまり、身の回りの工業製品は何らかの欠陥を内包している
と言っても過言ではありません。
 
実際に使用しながら生じた不具合をその都度に修正していく手法、
いわゆる現在のリコール制度以外の方法をとったとしたら、
開発から販売まで10年近く余分に時間が取られることになります。
 
時間だけなら良いのですが、
その分のコストは全てエンドユーザーに跳ね返って来ますので、
車の価格は家一軒分の値段になってしまい、
到底庶民に手が出ないシロモノになるのです。
 
つまり、工業製品にある程度の不具合を見越したリコール制度は、
廉価な工業製品を市場に出すという面と、
安全面双方のメリットを活かす制度なのです。
 
今回のリコール騒動は、
一般ユーザーと開発エンジニアの認識の相違が
発端の様に見受けられます。
 
本件問題の本質にはリコール問題ではなく
自国製品の保護といった国際問題などが
隠れしているように思えてなりません。

 
事不具合によるものよりも、
過敏な反応で冷静さを欠いたヒューマンエラーの方が
事故のリスクは遙かに高いのです。
 
正しい知識で、冷静に対応する
これこそが事故を起こさない最大の秘訣であることは
間違いありません。

2010/02/10 法工学研究員 石橋