DNA鑑定

DNAが一致することの意味

【DNAが一致することの意味】

 

よく頂く質問にDNA鑑定ってどれ位、正確なのか良く解らない・・・と

4兆7千億人分の1人って何?なんなの?

 

そこで、数式を持ち出さず簡単な考え方をご説明しましょう

 

 

 

DNA鑑定とは、DNAに含まれる情報を異同識別する事を指します。

 

つまり、試料Aと言う情報と、試料Bと言う情報を識別する事を意味します。

そして識別するためには、この情報を明白に示さなければなりません。

 

科学的根拠とは、どんなに正しいと思われる事象であっても、何らかの意味を持ち、

この意味を示す事が出来なければ、科学的根拠とはなりえないと考えられています。

 

ですから、比較し異同識別を行った遺伝マーカーを示し、

どの手順で、どう判定したのか情報を示しているのです。

 

 

よくTVのニュースやメディアなどで、

「事件現場の血痕から得られたDNAと被疑者より得られたDNAが一致した」と・・

 

そっかぁ~DNA一致したのかぁ~・・じゃ何が一致したのでしょ?

 

 

そもそもDNA鑑定では、ある前提を置いて考えられています。

 

それは、その血痕のDNA塩基配列と被疑者口腔粘膜からのDNA塩基配列が同じならば、

同じ体のものであると言う考え方をしています。

 

だから、同じ体にあるDNAが事件現場にあったのだから、被疑者はそこに居たのだ・・となります。

 

しかし、同じDNA塩基配列が一人もしくは複数の他人にも存在する可能性は無いのか?

 

数十億人のDNA塩基配列にありうる全ての変異のうち、

試料Aと試料Bに共通する変異は、必ず同一人のものと言えるのか?

 

これを説明しなければ、科学的な証拠とはなりません。

 

そこで、統計学、識別科学の理論と観点から、合理的な疑いが無くなるまで、

徹底的に、偶然一致する可能性を排除していく手法がとられているのです。

 

そして一般的に間違いが存在しないと確認検証された数値が

「4兆7千億人分の1人」を識別できると言う数値なのです。

 

 

しかし、二人の別人が分析されたマーカーについて、

同じDNA塩基配列を持つ可能性は、依然として残されています。

例えば、被疑者が同じ遺伝形質を持つ双子の場合や、

骨髄移植などによるDNAの変性も想像することが出来ます。

 

 

刑事事件などの鑑定書を作成する法科学の専門家は、

DNA鑑定だけを最重要視することを嫌います。

 

 

法科学者が使用する分析用キット試薬と、検証済みの分析機器・装置を使用することで、

個人のDNA型が識別されるのですが、

検査するDNAマーカーが異なる別の分析用キット試薬を用いれば、

DNAの他の領域について異なる個人的特徴も得られます。

 

つまり、違うDNA型が検出されたと、“詭弁”の基を生み出すこととなります。

 

そのため、アメリカを始め世界の国々の法科学者が、

特定のマーカーのみを使用することを提案し、義務化されている国さえあります。

 

現在、個人識別に利用されるマーカーは15ヶ所+性染色体、

これよりも多くのマーカーを使用する事には懸念が存在されます。

 

 

DNA鑑定による個人識別は、犯罪捜査の一部でしかなく、

個人の識別結果は、直接証拠や間接証拠・補助証拠などとつきあわせ検討すべきだと、

最初に警告したのはDNA鑑定の専門家である法科学者なのです。

 

 

犯罪現場から個人のDNAを特定したとしても、

それだけでは有罪性を証明できません。

 

同様に、その資料から特定のDNAが検出できないからと言って

無罪を証明することも出来ません。

 

 

 

 

ですが、日本では度々「DNAが無かった」だから無罪だぁ~・・と、

議論されることがあります。(不思議ですよね)

 

 

「DNAが存在する」ことは、実際にDNA検出すれば簡単に証明できます。

 

(実際にDNAが存在し科学的証明されたから、重要証拠として採用されたのでしょう)

 

 

「DNAが存在しない」ことを証明するには、

特定のDNAが存在したにも関わらず、

そのDNAが検出されなかった、全ての理由を証明し、

否定しなければなりません。

(ほとんど不可能だと思います)

ですから、絶対に「特定のDNAが存在しない」とは言えないので証明は出来ません。

存在しないことの証明

 

 

なのですが、日本の論争をみると、

棚で埃をかぶった十数年前の資料を引っ張り出し

再鑑定の結果、特定のDNAは存在せず、第三者のDNAが検出された

だから、最初のDNA鑑定が間違ってたんだぁ~・・と

 

 

特定のDNAは検出されなかった。

なるほど、それで「存在しないことの証明」は?

 

 

第三者のDNAが出た!

ほぉ~「第三者のDNA」← 誰のDNAなのか証明できるの?

被疑者と違う第三者のDNAと判定するには、

その第三者を特定し、被疑者のDNAでは無い第三者を証明しなければ、なりません。

さらに、経年によるDNAが変性している可能性や、

資料状態によるDNA劣化の可能性も否定する必要があります。

だから、検証結果見せてよ♪・・えっ・・無いの!

・・つまり、ただのコンタミ「資料汚染」って事でしょ。

 

 

だから、最初の鑑定結果が間違っているんだぁ~!

なんだそれ?

 

 

高精度で最新のDNA鑑定の結果だから。

・・あのね・・

例をあげると、DNA抽出技術なら以前のマニュアルの方が高精度です。

ただ、検査者の“腕”に依存する事が多く、反証検査して同じならない場合もある。

だから、科学的検証に問題があるとされ、あえて使用されない方法もあるんです。

ですから、最新鑑定法がすべて高精度、という考えは間違えです。

 

 

大学の偉い先生が言うのだから。

・・え~とですね・・

法科学のDNAラボってどの位の検体を回しているか、ご存じですか?

~GENESIS Workstation 200~

(数多くの試料をあつかうためにはバイオ・ロボットは欠かせない)

(どんなに進化した最新装置でもコントロールは“人”、洗練された知識と技術が必要です)

 

アメリカのCSIや日本の科捜研の平均は“1日”に30-50検体前後

大型のForensic DNAラボでは“1日”に250検体を処理します。それもたった十数名で

 大学ラボの平均は、“1年間”に20-50検体程度、

高価なキット試薬のほとんが消費期限切れで廃棄されます。

 

技術的な経験値がまったく違うのが、お解りになりますか?

・・ですから、思いっきりピント外れてる先生も・・

 

 

人の話も聞けるのが経験豊富なProfessional、人の話し聞かないのが偉い先生

あなたなら、相談したいのなら、どっち?

 

 

 

 

 

このページの冒頭に書いた

科学的根拠とは、どんなに正しいと思われる事象であっても、何らかの意味を持ち、

この意味を示す事が出来なければ、科学的根拠とはなりえない。

 

この語は、師匠の「ヘンリー・リー博士」から毎度しつこく教え込まれた言葉です。

 

もし「リー博士」が受検し、まだ私が助手だったら・・

 

きっと、検出されなかった仮説を20件くらい用意し、

突然ラボに現れ・・

「君・・この仮説、すべて実験による科学的検証を行い、否定しなさい」

でええぇぇぇぇ~

 

違うDNAが出た・・

「君・・このDNA型、誰だか特定してきなさい。2-3名のコンタミの可能性も踏まえて」

ぎょぇぇぇぇぇ~

 

 

(たぶん倒れるな、きっと)

(これくらい平気で言う人だから)

 

 

とにかく証拠にこだわる先生で、否定も肯定も全て証拠を持って証明して行きます。

机上の空論は許さない! すべては証拠に語らせろ!

・・ と ・・

だから、一流の世界的法科学者と呼ばれるのです。

 

 

現在の日本では、仮説や推論が多く、証拠を軽んじる論争が多いように感じます。

 

 

・・正しい議論は・・いつになるやら・・

 

 

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