接触DNAの研究 |
【接触DNAの研究】(Queen's Evidence=証拠の女王)
Confessio est regina probationum = 自白は証拠の女王である(ラテン語の古いことわざです)
最近では Queen's Evidence または Queen of Evidence と呼ばれるDNAを含む痕跡達
DNAを含む痕跡は、反論の余地がない証拠となり、被疑者の犯行を決定的に裏づけます
~新旧女王の交代? なのでしょうか・・それとも・・~
人間は、毎日何万もの皮膚細胞が再生され剥がれ落ちています。
犯罪が犯されるとき、加害者が現場に十分な数の皮膚細胞を堆積させ、
識別可能な証拠として集め、解析が出来るのならば、
接触DNA分析は、加害者を事件の現場に直結することが出来るかもしれません。
しかし、接触DNAの分析は、血痕や体液などの資料よりDNA量は極めて少なく、
DNA抽出技術は、多くのマニュアル行程を必要とする複雑な検査なのです。
難しい話はさておき、この項目では、
接触DNAの収集方法を少しだけご紹介しましょう
現在、接触DNA分析で行われている主なDNA採取方法は以下の3種
1)スワビング法(スワブ法) 綿棒採取による方法 (数十種類の綿棒を) (資料や状態により使い分ける) |
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2)カッティング法 資料の一部を 切り出す方法 (足利で行われた方法) |
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3)スクラッチ法 | メスで削り取る方法 |
【スワビング法の実際】
法科学用に開発された超高性能綿棒 回収率90%以上を誇る最新綿棒 この綿棒が開発された事で 世界中にダブルスワブ法が 紹介され注目を集めました。 |
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この綿棒に試薬を染み込ませます。 検出用試薬は大きく分けて3種 1)超純水 2)TE Buffer 3)Digestion Buffer 資料の状態により変更されます。 |
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試薬を含ませた綿棒で擦ります。 ペットボトルの飲み口を 丁寧に拭って行きます。 ペットボトルや缶コーヒーには 実績のあるDigestion Bufferを使用 |
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綿棒を切り出します。 実は、この超高性能綿棒 かんたんに2分割出来るように 設計されています。 |
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先端部分は再鑑定の為の試料 証拠保全のため半分しか使用しません 検査には柄の付いた方を使用します。 法科学用に開発される専用小物達は 至れり尽くせり |
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DNA抽出はEZ-1 Investigator-kitを使用 超純水で2倍希釈したG2Bufferと Proteinase Kを投入 酵素反応は56℃で15分 その後、場合によりキャリアRNA投入 |
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反応溶液から綿棒を取り出し 上下を逆に入れ直します。 底にあった綿棒の頭部を上にして スピンダウン12K-20Kで1分間 |
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綿棒を取り出します。 DNA抽出溶液が ほとんど減っていないのが解ります。 この超高性能綿棒なら微量のDNAでも しっかり抽出できます。 |
~超高性能綿棒を求めて~
例年2月のAAFSミーティング、2011年はシカゴでした。
古巣NYからは至近距離ですので
帰りに発注しようとメーカーへ・・すると、ガバメント以外には売らないよ・・すげぇ~高飛車
元々の開発は日本人だし、まして後輩で知り合いのおいらに・・言うのか?
まぁ~色々ありましたが
医薬・医療・医療器具の最先端には、必ず日本人が居います
そしてほとんどが、アメリカ・UK・ドイツ・フランスのどこかに居ます。
たかが綿棒ですが、相当高価で発注先は各国の警察です。
なんで、こんな美味しい市場なのに、日本のメーカーは居ないのでしょ?
・・┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ~・・
【スクラッチ法】
「3)スクラッチ法」は、あのジョンベネちゃん事件で採用された方法です。
現在、接触DNAの収集方法で最も効率的な方法とされています。
まず始めに検体をプレス処理し「小さめのメス」と「リフトテープ」で採取。
そしてDNAプロセシングチューブに入れられます。
と、いとも簡単に書かせて頂きました。が、
ホントは奥が深~いDNA収集手法なのです。
現在「Forensic DNA アナリスト」という称号を得るには、
専門研修と認定試験(Fellowship)を必要としています。
代表的な機関は、National Forensic Science Technology Center(国際法科学技術センター)と
American Society of Crime Laboratory Directors(アメリカ社会犯罪研究所)
ここで、DNA Analyst Training(研修と認定試験)を受け、合格しなければなりません。
この「3)スクラッチ法」は、専門研修において90分もの時間を掛け理論と実務を学びます。
(あまりに面白く、そっかぁ~ただ擦っても、ダメなんだぁ~)
(ですので、どこかでまとめてご紹介します)
広い面積からのDNA採取する事により、資料に残る僅かなDNAも見逃しません。
ますます敏感になるDNA増幅の技術を利用することで、
接触DNA分析は、身の回り品に残る加害者のDNAを解析し、
当時解決できなかったコールドケースやコールドヒットに役立つと研究が進められています。
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