毛髪鑑定

鑑定内容

 

【毛髪検査の方法】

 

毛髪検査の最大の重要ポイントは一番最初に行う外観検査です。

毛髪検査の方法

ここでは、外観検査から最後のDNA検査までを簡単にご説明いたします。

【1,外観検査】

肉眼検査及び光学顕微鏡を使用して、間違いなく“毛”なのか識別します。

 

外観検査は、最新の毛細管法と呼ばれる検査方法が行われます。

毛髪を毛細管に入れ、専用調合された顕微鏡用浸透溶液で満たし、顕微観察されます。

 

毛髪の検査は長い間スンプ法が用いられてきました。

様々な事案に求められる最新の科学捜査では、2次検査、3次検査は必須です。

いかにして、試料に影響を与えず試験検査が行えるかが最も重要視されるからです。

そして、HIROX製 KH-7700 など視野深度が深い3D顕微鏡を使用し観察されます。

 

 

    【検査内容】= 色調/形状/長さ/光沢/硬さ   
     
  1) 間違いなく毛なのか、他の繊維では無いのか?
     繊維統計資料を利用し、毛もしくは、それ以外のものに選別されます。  
     
  2) その毛は人の毛なのか、他の動物の毛ではないのか?
     (人獣識別) 獣毛統計資料との比較を行い、人の毛、獣毛に選別されます。 
     
  この検査で“人毛”と判断されると、次の検査に進みます

 

 

【2,形態学的検査】

 

光学顕微鏡及び電子顕微鏡を使用して、外観形態と毛の基本構造を探ります。

形態学検査

 

    【検査内容】= 小皮紋/髄質/横断面/特異な形態(美容処理など)  
     
  1) 間違いなく人の毛か否か(検査精度を上げて確認されます)
     人の毛と判断されると↓の検査に進む  
     
  2) 毛の発生部位の特定(何処の毛なのか、髪の毛?腕の毛?陰毛?)
     人毛の部位が特定されると↓の検査に進む。  
     
  3) 形態変化の特徴(美容処理による変化、外傷による変化、病的な変化)
     ここでは、人の毛の外的影響を精査し個人の環境・特徴などを探し出します。  

 

 

上記検査では、個人が生来もっている特徴→太さ・色調・髄質の形状

毛根の形状などの情報を得ることが出来ます。

 

さらに、日常生活を反映するような特徴→美容処理の有無・整髪剤の有無

病的な形状などの情報も得ることが出来るのです。

 

(蒸着処理した毛髪を走査線顕微鏡で撮影する)

捜査顕微鏡撮影

この画像を解析すると、整髪剤が付着しているのが解りますよね

この付着物をIRやGC-MSなどで分析し、化粧品を特定します。

 

【3,血液型による検査】

 

血液型検査は破壊検査である解離試験法を用いたABO式検査です。

 

一般的には5~6cmの長さの毛髪を洗浄後、砕き毛髪内部の組織を露わにします。

 

3種類の試験管を用意しそれぞれに、抗A、抗B、抗Hの血清を入れ、前記した毛髪を

3等分し、試験管に入れ、反応が出る条件下にて反応試験方法を遂行します。

 

結果はABO式検査特有の凝集により、判断されます。

 

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血液型検査は、検査資料に問題があり反応が出ない場合があります。

 

加熱された毛髪や採取が古い毛髪などは検査自体をお勧めしていません。

 

 

【4,元素分析による検査】

 

毛の含有元素を分析します。

 

分析方法はエネルギー分散型X線マイクロアナライザー(EDX)を用い、

毛の元素を分析して行われます。

 

人の毛髪の元素成分には個体差があります。

 

毛の成分のカリウム/カルシウム/硫黄などをスペクトラムグラフ化し元素成分の違いを検査します。

 

この元素検査では、1本の毛を数カ所に分類し、検査されます。

 

一般的には毛根直上部と毛幹中央部の2カ所を元素分析します。

 

これは、1本の毛髪でも成分の変動が有るためです。

 

また、同一人から採取した資料でも、その個体の毛の発生部分により変動があります。

 

ですから、毛髪の場合を例にとると、

前頭部・左右側頭部・頭頂部・後頭部と5種類の毛髪を検査する場合もあります。

 

【5,DNA型分析による検査】

 

お問い合わせが多い「製品内混入毛髪」「毛髪からの個人識別/血縁鑑定」

 

関連ページ → 毛髪からのDNA鑑定

 

【エキストラ検査】

 

毛髪検査方法は、ここで紹介した以外の方法も多々報告されています。

 

性犯罪現場から収集した人毛から、女性/男性を識別する検査法やタンパク質を解析し、

個人識別する方法など、日々進化し続けています。

 

【毛髪などの検査資料】

 

現在、弊所に持ち込まれる毛髪の数は日に日に増しています。

 

しかし、検査の対象となり得る条件下の毛髪資料は30件の内1件程度です。

 

つまり、せっかくの証拠を採取の段階で破壊しているのが現状です。

 

ピンセットなどでの採取は傷・折れなどの損傷が出てしまい鑑定には、なじみません。

 

また、紙製の封筒などでは摩擦と乾燥により外観も成分も変質してしまいます。

 

多くの上場企業には警察のOBが監査役や参事などで在籍しており、

そのような企業からの依頼は良状態でのご報告が可能な場合が多いようです。

 

証拠資料の扱い方を存じているからだと思われます。

 

【毛髪鑑定の可能性】

 

毛髪の遺留物に関しての研究は世界的にみてドイツと日本が群を抜いています。

 

毛髪鑑定は、DNA鑑定や指紋鑑定のように

個人を決定的に特定出来る切り札とは、

ならないと考えられてきました。

 

しかし、毛髪の形態や化学分析の結果は個人の生来の特徴、

生活環境などの状況を表しており、

これにABO式検査やDNA型鑑定が附随されれば、数々の犯行の重要証拠となり得ます。

 

さらに、毛髪による多面的な検査方法として、麻薬や毒物検査にも利用されています。

 

今後、毛髪鑑定は次世代科学捜査の切り札になり得る可能性が十分にある研究なのです。

 

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